第6回 「カイコは小さな空間で大きな栄養を生み出すか」

むしはしです。
今回は、カイコの飼育密度と得られるエネルギーについて見ていきましょう。


以下の表をご覧ください。
「あさぎり」などはカイコの品種名です。

カイコについては、人工飼料育に対応した壮蚕用飼育装置という農水省の蚕糸・昆虫農業技術研究所の研究データに基づいています。彼らは5令幼虫に対応した、人工飼料を用いた自動的な高密度飼育に挑戦し、好成績を修めています。今回はカイコを健康的に飼育できる最大の密度として、この研究データを採用します。
カイコ蛹のエネルギーを120kcal/100g(fresh weight)(片山ら,2009)とし、カイコ1gを得るために必要なエネルギー(エサ;桑の葉)を8.06kcal/g(第5回記事参照)として計算しています。



ブロイラーのカロリー(3200kcal/kg)については、Aviagen株式会社からのデータを参照しました。同ページの"Broiler Nutrition Specifications"から引用しました。
ここでの最大飼育密度(33kg/m2)は、欧州委員会の規定に則りました。条件によっては最大(42kg/m2)まで許可されるようです。
1羽あたりの重さは一般的な2800gとしました。
ブロイラー1gを得るために必要なエネルギー(エサ;専用飼料)は5.7kcal/g(第5回記事参照)として計算しています。



さて、ここから何が見えてくるでしょう。
たくさんエネルギーを投資できるならば、狭い空間でより効率良く動物性タンパクを生産できるのはブロイラーですね。
しかし、ブロイラーのエサは専用飼料で育つことに対して、カイコはただの葉っぱで育つので、やはり単純な比較はできません。
飼育日数もカイコが約25日であることに対して、ブロイラーはおおまかに40日程度とだいぶ違ってきます。


カイコは狭い空間で効率良く食料を生産してくれるかどうかは、なかなか複雑で難しい問題です。
でも、少なくともずば抜けて優秀だとは言いにくいかも…