第7回 「カイコは人間と食料が競合しない」

2011.1.13追記
"昆虫"という大きな枠で論じてしまった事を反省しております。
この記事の結論を

「昆虫は人間と食料が競合しない」という点を、カイコ食の利点として主張することは適切ではない

と解釈していただければ幸いです。
また、この記事については全体的に論じ方が乱暴だったと思います。
後ほど訂正させていただきます。
私の文章力の欠如で読者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

むしはしです。
昆虫を食べるメリットとして、「昆虫は人間と食料が競合しない」という点が取り上げられることがあります。このことについて検討してみましょう。


まず、この問題を考えるためには「昆虫は人間と食料が競合しない」という状況は何なのかを考えなければなりません。将来、地球の人口が急増したら、私たちの食料が足りなくなるかもしれません。私たち人間の主食は穀物です。
しかし、家畜の主食も穀物です。そうすると、私たちは貴重な穀物を家畜に与えるわけにはいきません。穀物から直接エネルギーを摂取した方が、肥育した家畜を食べるよりもずっとエネルギー効率が良いからです。
でも、私たちはお肉が食べたいです。小麦や米に足りないアミノ酸を補うためにも動物性タンパクが必要です。よし、じゃあ穀物を主食としない動物性タンパク源を探そう、ということです。
以上が「昆虫は人間と食料が競合しない」という事が意識されるべき状況です。



さて、人間と食物が競合している家畜とは何でしょうか。
ウシですか?ブタですか?ニワトリですか?現在、いずれの家畜・家禽でも競合していると言えます。
しかし、ウシは牧草だけでも美味しい赤身肉に育ちます。ブタはイノシシと同種であり、雑食性です。だから草でも根っこでも木の実でも昆虫でも何でも食べて生きていけます。ニワトリはカルシウム分さえしっかり確保できれば、人間が食べられない残飯でも昆虫でも何でも食べて生きていけます。

穀物などの濃厚飼料を与えると、脂肪分が増え、成長が早くなるというだけです。人間と同じものを食べないと生きていけない家畜などいないのでないでしょうか。確かに、今と同じようにお肉を食べられなくはなるでしょうが…



また、家畜は人間と食物が重複することで有利になる点もあります。
例えば、1つの作物で人間の食料と家畜の飼料を同時に賄うことができます。何らかの理由で人間が食べない部位を家畜に与えれば、資源の有効活用となります。
カイコは基本的に桑の葉しか食べられません。しかし、桑の葉は人間の食料にはなりません。食料が足りない状況で、カイコを食べるためにわざわざ桑を栽培する必要があるでしょうか。
人間と家畜の食物が重複(競合)することは、悪いことばかりではありません。



カイコについてもう少し考えてみましょう。
カイコは桑の葉を食べます。ここで注意しないといけないのは、桑の栽培にもエネルギー投資が必要だということです。
壮蚕用の桑だと、10aの土地に800〜1500本の桑の苗を植えつけます。10aあたり、基肥は1500kgの堆きゅう肥と100kgの苦土石灰、追肥は春と秋合わせて窒素36kg、五酸化リン14.4kg、酸化カリウム14.4kgが必要です。この結果、150kg程度の桑葉を得ます。
この肥料で人間が食べられる作物作った方が良くないですか?



この問題について、個人的な意見を述べます。
「人間と食料が競合しないから、昆虫は食料として有望だ」という論理は、僕は的外れな気がします。ニワトリにトウモロコシの茎と食べ終わったホタテやカキの貝殻を与えて、あとは放し飼いにしてその辺の昆虫を食べさせて、ニワトリの卵でも食べればいいじゃないですか。
いかがでしょうか?