大学祭メニュー紹介

むしはしです。
僕も難しい話をちょっと中断して、我々が昆虫料理試食会で試供したメニューを紹介します。
(昆虫食の文化的な意義についてはすごく難しくて、億劫になっています…)



1.カイコスナック
 繭から取りだしたカイコの蛹を乾熱器で80℃・48時間乾燥させたもの。
 エビのようなカイコの強めの香り、苦み、うまみを楽しめる。
 乾燥させると、生や天ぷらとは風味が変化する。
 ビールに合いそうな味で、予想外にすごく評判がよかった。
 味付けをしなくてもそのままポリポリいける。


2.カイコお好み焼
 カイコスナックを挽いて粉にし、お好み焼きの生地に練りこんだ。
 かなり大量に入れないと風味は感じない。
 1枚に50頭くらい入れると、だしを入れないものより風味がよくなる。


3.カイコ粉末クッキー
 カイコスナックを挽いた粉末をクッキーに練りこんだもの。
 クッキーはシナモンやジンジャーなどのスパイスを利かせ、食べやすくした。
 エビのようなカイコの風味がやや強めで、コクが強くなる。
 好き嫌いが分かれるかもしれない。
 今回は以下の生地にカイコ30匹(約10g)を入れた。<スパイスクッキー生地>
 ・バター 70g ・三温糖 50g ・全卵 0.8個分 ・薄力粉 125g
 ・ベーキングパウダー 小さじ1/2 ・ショウガ 小さじ1.5 ・シナモン 小さじ1
 ・クローブ 小さじ1/2 ・ナツメグ 小さじ1/4


4.カイコペーストクッキー
 カイコの蛹を下茹で、裏ごしをして白いカイコペーストを作った。
 そのペーストをスパイスクッキー生地に練りこんだ。
 今回は上記の生地にカイコ30匹分(約35ml)のペーストを入れた。
 カイコペーストはナッツのような香りがし、またクリーミーなので、
 カイコが入っていないスパイスクッキーよりも風味がまろやかになった。

 
5.カイコ大学芋
 生のカイコ蛹を乾煎りして体液を凝固させると同時に余分な水分を飛ばし、油を入れて素揚げした。
 素揚げしたカイコは別皿にあけ、揚げ油はカイコの風味が移っているのですべて捨てた。
 次にサツマイモを一口大に切り、素揚げした。
 サツマイモが揚がったらその鍋にカイコを戻し、砂糖を入れて見た目が良くなるまで絡めながら加熱して完成。
 カイコはナッツ類の香りがして、サツマイモにとてもよく合った。


6.カイコ天ぷら
 よく洗った生のカイコ蛹に衣をつけ、油で揚げた。
 破裂しないように、ちゃんと中まで火が通るように揚げるのはなかなか難しかった。
 

7.ウジ(センチニクバエ幼虫)スナック
 まず糞抜き、下茹でしたウジを乾煎りし、水分を飛ばした。
 次に油を少量入れてカラッと小麦色になるまで炒め、塩コショウで味付けをした。
 桜えびのような風味でクセが無く、とても食べやすい。
 正直、虫だってわからない。


8.ウジ入りつくね
 鶏もも肉のつくねにウジスナックを混ぜ込んだ。
 ウジスナックは少し水分を吸い、モチモチとした歯ごたえが生まれた。
 ただし、風味は全く変わらない。

カイコ料理を作ろうと思った訳 (2)

時はあっというまに流れて3年生。

3年生の前期はどの研究室に入るかを決めます。
どこに行こうか決めてなかったので、とりあえずたくさん見学に行きました。
その中の1つが昆生研。

昆生研はカイコ料理のほかにも色々なテーマを研究していますが、
ちょうどその頃の私は
「食料危機に立ち向かうためには新しいタンパク資源が必要なのでは?」って考えてたから、カイコ料理のことだけしか耳に入りませんでした。

カイコ料理に使うカイコは蛹です。
それは繭をとったあとで、捨てられてしまうもの。
もしそれがおいしく食べられる(他のものに利用できる)ならいいのにな。。。


でも結局私は
・海外に安く行きたい
・留学生の友達が欲しい
温室効果ガスの研究したい

という理由で植物栄養学のK先生の研究室(国際環境農学)に入りました笑


〜続く〜

カイコ料理を作ろうと思った訳 (1)

お久しぶりです、まいまいです。

むしはしさんとdoiPudding君が難しい話をしている。。。
今回は専門的なお話をぶった切って、
なんで違う研究室の私が昆生研の皆に混ざってカイコ料理作ってるかをお話します。


私たちの学科は1年生のときに、学科教授が自分達の研究分野を紹介するというような授業がありました。
当然、昆生研のF先生も講義する訳です。

F先生はその授業で
「カイコ入りハンバーグ」
     と
「カイコ入りキャットフード」を紹介しました。


「え…カイコなんて食べれるの?虫じゃん(>_<)」
って私を含め、その場にいた皆が思ったはずです。

ちなみにカイコだけで作ったキャットフードは猫も食べないということです笑
カイコが50%入ったものは食べるっぽいけど。。。


先生は私たちにカイコ入りハンバーグのレシピなどが載ったDVDをくれました。

「大学って変わった研究してる人 多いんだなー」


〜続く〜

色彩変異の話②

今回はコーンスネークにどんな色彩の形質があるかを紹介していきたいと思います。
今回は一遺伝子の変異だけで起こるものをあげていきます。

  • ノーマル

前回参照

前回参照

  • アネリスリスティックA

ブラックアルビノとも言われる、黒くてモノトーンな渋いヘビです。
アメラニではメラニンが欠損していましたが、アネリでは赤色色素であるエリスリンが欠損するため黒いヘビになります。
劣性遺伝します。

  • アネリスリスティックB(チャコール)

アネリAと同じく、赤色色素欠損形質です。これも劣性遺伝します。
ですが、アネリAではわずかに黄色色素が残るのに対し、こちらは全く残りません。
アネリAとは違う遺伝子座に座位していることが交配によって確かめられています。
一般的にはチャコールといったほうが通りがいいかもしれません。

こちらはメラニンが欠損するのではなく、減衰する色彩変異です。
色としてはノーマルから黒味を薄くした明るい色の個体が多いです。
ハイポメラニティックには同じタイプの遺伝変異が多く、他にサンキスト、ラヴァ、ウルトラが知られています。
ハイポ、サンキスト、ラヴァはそれぞれ独立に劣性遺伝します。
ウルトラはアメラニと同じ遺伝子座にあり、複対立遺伝します。

  • ラベンダー

一見アネリに見えますが、よく見ると薄紫色が乗った劣勢遺伝形質です。きれいです。
なんでこのような色になるのか、という研究はされていないようでした。残念。
日本人には人気の色です。

  • キャラメル

ノーマルの赤かった部分がすべて黄色に置き換えられます。なので全体的に黄色くなる劣性遺伝形質です。
赤色色素は黄色色素から作られると考えられており、その赤色色素になる過程の反応経路に異常が起こったものと考えられています。
両生類・爬虫類では、このような色彩変異はザンティックと言います。

  • モトレー/ストライプ

モトレーは背中の斑紋がはしご状になる変異、ストライプは背中の斑紋がつながる変異です。
どちらも同一遺伝子座に存在し、複対立遺伝をします。
モトレーには特徴として少しのハイポメラニティック要素を持ち、色彩を明るくします。

  • ブラッドレッド

全身が赤くなる劣性変異形質です。
ただ赤くなる、というわけではなく同時にDiffusedと呼ばれる斑紋の変異が起こります。頭の斑紋が消え、体の斑紋が薄くなります。
この斑紋を薄くする、という性質を利用してさまざまな品種が生み出されています。


このようにたくさんの色彩変異があるのが爬虫類のいいところですね。
ちなみに、コーンスネークでは存在しませんが、黒化するメラニスティック、黄色色素がないアザンティック、アルビノではなく(目が赤くない)白化するリューシスティック、体の一部分が不規則に白くなるパイボールなど数えきれないぐらいの変異があります。


次回は今回出てきた複対立遺伝について説明します。

第7回 「カイコは人間と食料が競合しない」

2011.1.13追記
"昆虫"という大きな枠で論じてしまった事を反省しております。
この記事の結論を

「昆虫は人間と食料が競合しない」という点を、カイコ食の利点として主張することは適切ではない

と解釈していただければ幸いです。
また、この記事については全体的に論じ方が乱暴だったと思います。
後ほど訂正させていただきます。
私の文章力の欠如で読者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。

むしはしです。
昆虫を食べるメリットとして、「昆虫は人間と食料が競合しない」という点が取り上げられることがあります。このことについて検討してみましょう。


まず、この問題を考えるためには「昆虫は人間と食料が競合しない」という状況は何なのかを考えなければなりません。将来、地球の人口が急増したら、私たちの食料が足りなくなるかもしれません。私たち人間の主食は穀物です。
しかし、家畜の主食も穀物です。そうすると、私たちは貴重な穀物を家畜に与えるわけにはいきません。穀物から直接エネルギーを摂取した方が、肥育した家畜を食べるよりもずっとエネルギー効率が良いからです。
でも、私たちはお肉が食べたいです。小麦や米に足りないアミノ酸を補うためにも動物性タンパクが必要です。よし、じゃあ穀物を主食としない動物性タンパク源を探そう、ということです。
以上が「昆虫は人間と食料が競合しない」という事が意識されるべき状況です。



さて、人間と食物が競合している家畜とは何でしょうか。
ウシですか?ブタですか?ニワトリですか?現在、いずれの家畜・家禽でも競合していると言えます。
しかし、ウシは牧草だけでも美味しい赤身肉に育ちます。ブタはイノシシと同種であり、雑食性です。だから草でも根っこでも木の実でも昆虫でも何でも食べて生きていけます。ニワトリはカルシウム分さえしっかり確保できれば、人間が食べられない残飯でも昆虫でも何でも食べて生きていけます。

穀物などの濃厚飼料を与えると、脂肪分が増え、成長が早くなるというだけです。人間と同じものを食べないと生きていけない家畜などいないのでないでしょうか。確かに、今と同じようにお肉を食べられなくはなるでしょうが…



また、家畜は人間と食物が重複することで有利になる点もあります。
例えば、1つの作物で人間の食料と家畜の飼料を同時に賄うことができます。何らかの理由で人間が食べない部位を家畜に与えれば、資源の有効活用となります。
カイコは基本的に桑の葉しか食べられません。しかし、桑の葉は人間の食料にはなりません。食料が足りない状況で、カイコを食べるためにわざわざ桑を栽培する必要があるでしょうか。
人間と家畜の食物が重複(競合)することは、悪いことばかりではありません。



カイコについてもう少し考えてみましょう。
カイコは桑の葉を食べます。ここで注意しないといけないのは、桑の栽培にもエネルギー投資が必要だということです。
壮蚕用の桑だと、10aの土地に800〜1500本の桑の苗を植えつけます。10aあたり、基肥は1500kgの堆きゅう肥と100kgの苦土石灰、追肥は春と秋合わせて窒素36kg、五酸化リン14.4kg、酸化カリウム14.4kgが必要です。この結果、150kg程度の桑葉を得ます。
この肥料で人間が食べられる作物作った方が良くないですか?



この問題について、個人的な意見を述べます。
「人間と食料が競合しないから、昆虫は食料として有望だ」という論理は、僕は的外れな気がします。ニワトリにトウモロコシの茎と食べ終わったホタテやカキの貝殻を与えて、あとは放し飼いにしてその辺の昆虫を食べさせて、ニワトリの卵でも食べればいいじゃないですか。
いかがでしょうか?

第6回 「カイコは小さな空間で大きな栄養を生み出すか」

むしはしです。
今回は、カイコの飼育密度と得られるエネルギーについて見ていきましょう。


以下の表をご覧ください。
「あさぎり」などはカイコの品種名です。

カイコについては、人工飼料育に対応した壮蚕用飼育装置という農水省の蚕糸・昆虫農業技術研究所の研究データに基づいています。彼らは5令幼虫に対応した、人工飼料を用いた自動的な高密度飼育に挑戦し、好成績を修めています。今回はカイコを健康的に飼育できる最大の密度として、この研究データを採用します。
カイコ蛹のエネルギーを120kcal/100g(fresh weight)(片山ら,2009)とし、カイコ1gを得るために必要なエネルギー(エサ;桑の葉)を8.06kcal/g(第5回記事参照)として計算しています。



ブロイラーのカロリー(3200kcal/kg)については、Aviagen株式会社からのデータを参照しました。同ページの"Broiler Nutrition Specifications"から引用しました。
ここでの最大飼育密度(33kg/m2)は、欧州委員会の規定に則りました。条件によっては最大(42kg/m2)まで許可されるようです。
1羽あたりの重さは一般的な2800gとしました。
ブロイラー1gを得るために必要なエネルギー(エサ;専用飼料)は5.7kcal/g(第5回記事参照)として計算しています。



さて、ここから何が見えてくるでしょう。
たくさんエネルギーを投資できるならば、狭い空間でより効率良く動物性タンパクを生産できるのはブロイラーですね。
しかし、ブロイラーのエサは専用飼料で育つことに対して、カイコはただの葉っぱで育つので、やはり単純な比較はできません。
飼育日数もカイコが約25日であることに対して、ブロイラーはおおまかに40日程度とだいぶ違ってきます。


カイコは狭い空間で効率良く食料を生産してくれるかどうかは、なかなか複雑で難しい問題です。
でも、少なくともずば抜けて優秀だとは言いにくいかも…

色彩遺伝の話①

遺伝の話をします。
メンデルの法則を思い出してくださいね。

  • 優勢の法則
  • 分離の法則
  • 独立の法則

天然記念物「岩国のシロヘビ」ってご存知でしょうか?真っ白くて目が赤いヘビです。
あれはアオダイショウのアルビノです。さて、アルビノとは何でしょうか?
アルビノとはつまり遺伝子の中のメラニン合成遺伝子に異常があり、黒色色素のメラニンを合成できなくなった個体です。
アオダイショウの元の色は暗い緑、ということでこれが抜けて白くなるわけですね。
ついでに目の色素も抜けまして、神秘的な赤い目になるというわけです。
アルビノの形質は通常の劣勢で、異常なメラニン合成遺伝子がホモにならないと発現しません。
また、アルビノは通常個体に比べて視力が弱く、外敵に襲われやすいとも言われます。
だからこそあの野生下であのようなシロヘビの個体群は珍しいということです。



話をコーンの話に戻します。コーンのノーマル個体は赤茶地に黒く縁取られた濃い赤茶の斑紋(ブロッチ)があるものです。
これがアルビノになるとメラニンがなくなるわけですから黒い縁取りが消え、全体として明るい赤〜オレンジの個体になります。
コーンではこのアルビノのことをアメラニスティックと呼びます。この呼び方は爬虫類全般に多いようです。


A:通常のメラニン合成遺伝子、a:異常型メラニン合成遺伝子と考えましょう。
AAの通常個体とaaのアメラニ個体を掛け合わせたとしましょう。
表1:AA×aaの結果

すると生まれてくる子すべてがAaのノーマル個体になります。あれ、アメラニはどこに行った?これが優勢の法則ですね。
今度はAaの個体同士を掛け合わせてみましょう。
表2:Aa×Aaの結果

お、アメラニ来た!今度は1/4の確立でアメラニが生まれてきますね。これが分離の法則です。
同じようにAa×aaだと半分がアメラニになります。
アメラニは最初に固定された変異形質で、当時は盛んにアメラニの選抜交配が行われたようです。
アメラニスティックからは選抜交配の結果、同一の変異遺伝子を利用し、サングロウ・フローレッセントオレンジなどの品種が作られています。